町田樹という松明(前編)

私が町田樹というスケーターを認識したのはソチ五輪シーズンの前年、2012年〜2013年の頃だったと思う。その頃の日本代表男子はソチ五輪の3枠を巡ってハイレベルな選考プレシーズンを戦っており、お茶の間観客であった自分にもその競争の熾烈さは伝わってきた。

そのシーズン彼は初めてグランプリシリーズの表彰台に立ち、中国杯では憧れの高橋大輔選手を抑えての初優勝も果たす。そして初めてグランプリファイナルにも進出しました。

2012年中国杯SP「F・U・Y・A」

演奏:C2C

振付:ステファン・ランビエール

(今見てもカッコいいですね。町田さんの音楽への感性やリズムの刻み方が味わえて好きなプログラムです)

同FS「火の鳥

作曲:イーゴリ・ストラヴィンスキー
振付:フィリップ・ミルズ

同EX「ロシュフォールの恋人たち

作曲:Michel Legrand

振付:宮本賢二

(実はこのEXかなり好きなのです。少し重苦しさもある楽曲なのですが、冒頭の3Aが兎に角カッコいい!白シャツも似合ってます。指先までしなやかに使った動きが美しいですね)

おまけ

中国杯フリー後にトイレでリュウコーチからお説教を頂戴するというある意味?町田さんらしい人間味のあるエピソードと言うのでしょうか…)

 

そんな彼の躍進を見て、「なんか面白い存在が出てきた!」と思ったりしたのだけど、そのシーズンの全日本選手権では9位に終わり、翌年の五輪代表を目指すには結果内容共に厳しいものだったように思う。

私自身も町田樹ってSPでいい位置につけてもフリーで緊張して失敗しちゃうタイプの選手だなぁ…)なんて思ったりしました。多分後にご本人が語られる通り、全日本終了時点での町田樹の代表枠争いは6番目くらいの立ち位置だったのは事実でしょう。

その後は私の興味も浅田選手や高橋選手、羽生選手などなどいわゆるスター選手達の五輪を目指す戦いに移っていったので彼への関心は暫く脇に追いやられる事になります。

そして始まったソチ五輪のシーズン。町田樹は凄まじいばかりの活躍を見せます。初戦のスケートアメリカでは高橋大輔選手、小塚崇彦選手を抑えて優勝

2013年スケートアメリカSP

エデンの東

作曲:Lee Holdridge

振付:フィリップ・ミルズ

同FS

同EX

「白夜光」

作曲:河野伸

振付:町田樹

続くロステレコム杯でも苦しみながら地元ロシアのコフトゥン選手を振り切り連続優勝を果たします。もはや昨季までの優勝とは違う、完全に地力がついての優勝。

2013年ロステレコム杯SP

同FS

2季連続進出のグランプリファイナルではショートで出遅れるも、そこで終わらず出来る限りの巻き返しを見せ4位になる。もう「惜しい選手」でも何でもない、屈しない強い選手になっていました。

2013年グランプリファイナルSP

同FS

この頃はメディアに発するインタビューコメントも強気で攻めていたのでその独特な語彙から「氷上の哲学者」なんてあだ名をつけられていましたねー。この表現の賛否はともかく、今でも彼の基盤になってるような表象な気がします。

めざましテレビより

 

いよいよ始まる全てが決まる2013年度全日本選手権。これまでのどこか自分に自信がない町田樹はそこにいない、五輪に行くのは僕だ!!という揺らがない強い意志と確固たる実力がついたスケーターが氷上にいました。

2013年全日本選手権SP(解説なし)

同FS(解説なし)

私もテレビの前で町田樹のショートの演技後のガッツポーズ、フリーの火の鳥を見て「あぁ彼は本物のトップスケーターになったんだなぁ」と自然に思いました。

しかし私が町田樹の魅力に本当にのめり込むのはまだ先の話である。(後編に続く)

 

おまけ

(町田ファンの間では有名な?エピソード「町田坊主」。彼の五輪出場への道筋はこの髪型にする瞬間から決まったと言っても過言ではないのかも知れない…??)